gofujita notes

on outline processing, writing, and human activities for nature


谷戸 (やと) の風

 

谷戸の奥。

ひとつ左奥の尾根から

風の音がきこえたと思いながら

目の前の

スギの大木を見上げると

 

てっぺんあたりが

風でゆっくり右にしなりはじめ

 

そのたわんだ枝の上から、

白い雪のかたまりが三つ

真ん中、下、上の順番に落ちはじめる。

 

かたまりは、なんとか形を守りながら

でも一部は壊れ、小さな白い粉の尾をひくように

ゆっくりと落ちる。

 

何万年とも千分の1秒とも思えるような

時間のあとに、

その雪のかたまり三つは、落ちはじめた順番で

足もとの田んぼに音をたててぶつかり

田んぼを覆う雪の一部に変わる。

 

見上げると風はもうとおり過ぎ、

スギの枝のてっぺんは

暗いけれど勇気をくれる雪雲の下で

ほんの少し揺れている。