on outline processing, writing, and human activities for nature
金曜の夕方。
ぼくは音楽を聴こうとするのに
疲れてしまった。
ニイニイゼミは
鳴いているし、
彼の染み入るような声が
胸にも響いている。
でもぼくは、音楽を探すのに
疲れている。
ポップスではなく
ブルーズが聞きたい。
いやロバート・ジョンソンではなく
でもロバート・ジョンソン的な曲が聴きたい。
いやいやジャズのようでいて
ブルーズのような音楽を聴きたい。
いやいや、いや。
そして結局
セミの声に助けをもとめる。
ところがそこにヤマガラがやってきて
ニイニイゼミは静かになる。
ニイニイゼミのいる幹にヤマガラは飛びかかり
その0.2秒前にセミは飛び去る。
その彼女と彼の行動に
迷いはない。
やがてぼくは
ヤマガラの7年と2か月の生活と
ニイニイゼミの4年と14日の生活に
ほんの少し感謝していた。