on outline processing, writing, and human activities for nature
Wordpiece に、このところ実に Wordpiece らしい楽しい記事が、つづいて公開されている。
とくにOmniOutliner についての3つの記事なんか、Wordpiece フリークであるぼくに言わせたら、まさに Wordpiece の中の Wordpiece。
最初のふたつの記事は、OmniOutliner と OmniFocus の歴史や系譜をそれとなくふり返りながら、その道具としての機能について、これまたさりげなく書かれた文章。この分野について広く深く、そして正確な知識をもっているだけでなく、アウトライナーへの深い愛がなければかけない文章だと、ぼくは勝手に思っている。
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で、ぼくはやはり3つめの記事について語りたい。タイトルにあるように、OmniOutliner の「Group グループ化」の機能と具体的な使い方を紹介した記事。
複数の項目(トピック)を選びこの機能を実行すると、(1) 項目がばらばらにちらばっている場合は一か所に集められ、(2) 集められた項目が一階層下がり、(3) その項目群のトップに空白の親階層がつくられる。
つまり、関係しそうな複数項目を眺めながらひとつ上の階層に上がる準備を一度にできる。この作業を、Tak.さんは「レベルアップ」と呼び「分類」とはちがう役割をもつことを強調している。
Tak.さんは、このレベルアップが、たとえば集めた項目群の上位概念や文脈を見つけることであり、それ自体が強力な発想法にもなるとしている(アウトラインプロセッシングミニ入門)。
当然のように書かれているけど、ここがポイント。グループ化はアウトラインプロセッシングの鍵になる、もしかするといちばん大切な操作ではないかと、ぼくは考えている。
念のためにかいておくと、アウトラインプロセッシングとは、たとえばテクニカル・ライティングなどで文章を書くための操作であり、かつ書きながら考え、考えながら書くための操作でもある。
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レベルアップについては、さらにもう少し語っておきたい。レベルアップは分類とどうちがうのか。なぜ、アウトラインプロセッシングにとって大切な機能なのか。
Tak.さんがレベルアップと呼ぶ操作は、選んだその項目の集合が、項目ひとつひとつではできなかった新しい機能(文章全体の中での役割)を明示的な形で宣言する作業だと、ぼくは理解している。
項目それぞれが単独だとできなかった新しい機能を生み出す、とはどういうことか。
たとえば、ぼくがこの一週間やった森の調査でとった6つのメモがあったとする。これはあくまでも仮想の例。
まだ一か所ずつの記録だけど、パターンがはっきりしているので、この6つから次のような3つの予想をたててみた。
実際の野外調査なら、この予想を確かめるために、上の6種類の条件を備えた林をたくさん選んで、同じように調査をして、他の場所でも似たパターンがあるかどうかを繰り返ししらべることになる。
で、ここが最初のポイントだけど、この3つの予想のうち予想1と2は、上から2番目と3番目のメモ、それぞれひとつずつからも導ける。一方、予想3は6つのメモが集まって初めて見えてくる。つまり、この予想3を導くプロセスがレベルアップ。メモの上3つと下3つを合わせてカラスは山奥におらず住宅そばの森にいること、メモの下3つから、住宅の森ならどこでもいることが予想できる。
さらに、上の予想1から3もつぎのようにレベルアップできる。
I. ハシブトガラスは住宅地の森ならなんでも好きだけど、カラ類は山奥にある特定の森を選り好みする
この段階で、メモ6つのアウトラインはこんな風になる。
I. ハシブトガラスは住宅地の森ならなんでも好きだけど、カラ類は山奥にある特定の森を選り好みする
フィールドノートの6つのメモをレベルアップすることで、妥当性をテストしたい具体的な予想を導くことができたのだ。
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この例をつかって、少しちがうレベルアップの例も考えてみよう。メモをみながら、別のアイディアを加え、そこから新しい予想を導く例である。
6つのメモを眺めているうちに、つぎのようなことを思い出して書き留めたとする。
さらにこの新しいメモと先の6つのメモを合わせて、次のような予想が思い浮かぶ。
II. カラ類は好みの森があっても、そこに捕食者がいるときらいになる
で、7つのメモからのレベルアップしたアウトラインはこうなる。
II. カラ類は好みの森があっても、そこに捕食者がいるときらいになる
このレベルアップで手にした予想IIはカラ類はカラスがいないところが好きという予想なので、先のカラ類は山奥が好きという予想Iとちがう、新しいアイディアである。カラ類は山奥が好きなのではなく、山奥にはカラスがいないから好きなのだ。
ハシブトガラスはカラ類を食べるというメモがひとつ加わったことで、先のメモ6つだけでは得られなかった新しい予想も手にすることができ、この予想IとIIの妥当性を調べるためには、山奥だけどカラスがいる森や、住宅地そばだけどカラスのいない場所を探しだすか、実験的にそういう状況をつくりだす必要があることにも、気づくことができる。
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ここでは、ぼくにとって身近なフィールドノートのメモの例を挙げたけれど、こうしたレベルアップの操作は、他の場合にも当てはめることができる。たとえば、本を読みながらとったノートや、日々のひらめきを記録したノートなど。
そして、こうした操作は、実は多くの人が多くの場面でアウトライナーを使うことなく、アウトラインプロセッシングなどと身構えることなく、無意識のうちに行なっているプロセスであることも、イメージできると思う。こうした無意識にすすめている「考える」作業を、敢えて意識することで、考える作業をより研ぎ澄ますことができると、ぼくは考えている。
Tak.さんが、この「グループ化」の記事で説明しているレベルアップという操作は、少なくともぼくにとって、研究だけでなく、テクニカルライティングや、考えながら買いたり、書きながら考えたりする作業の中で、とても大切な役割を担っているとぼくは考えている。