gofujita notes

on outline processing, writing, and human activities for nature


正直なレビューを見返りに

たくさんの万年筆レビューをつづけている Matt Armstrong の the Pen Habit というサイトに、以下のような言葉を見つけました。2016年1月の記事の冒頭です。

The pen for this review was provided free of charge by the good folks at Goulet Pens in exchange for an honest review. No additional compensation was provided. All opinions expressed herein are my own.

ここでレビューするペンは、Goulet Pen の友人から無償で提供されたものです。正直にレビューするのがその代価とのこと。それ以外の見返りはありません。ここで公開した意見は、すべてぼく個人のものです。

Goulet Pen は、先日の記事にも登場しましたが、米国ヴァージニア州をベースにするオンラインのリテール (販売店) です。提供されたのは、Vac Mini という台湾のメーカー TWSBI (トゥぃズびぃ) が売り出したペン。日本でも人気のある製品のようです。

リテールが「正直な評価」を交換条件として、売り出し中の新製品をレビューアーに提供する。しかもそのことを、最初に表明してからレビューに入る、という点に興味をもちました。メーカーがそれを良しとしているようにも感じます。

実際にそのレビュー内容も、基本的に前向きな評価ですが、気づいた問題点はクリアに指摘しています。

たとえば、このペンの一番のウリであるインク補給のメカニズムについてのコメント。バキューマティック・システムと呼ばれるメカニズムの一部に欠点を感じたことを、冷静に分かりやすく説明しています。プランジャーと呼ばれるインクを蓄えるタンクを上下する栓が、ペン先へのインクの流れを妨げる場合があるという問題です。

Matt は、これと似た現象が、同じバキューマティック・システムでインク補給する TWSBI 以外のペンにも見られることに触れながら、その対策法も話した上で、具体的にどんな場面で困るのかを説明しています (動画では8分あたりから)。

この例に限らず、万年筆の世界ではこのようなフェアに見える評価システムが、売りものであるペンを対象に機能しているように見えます。

この「正直な」評価システムは、万年筆をよりよい道具として育てるために有効なシステムだと、ぼくは考えています。

そして、リテール (販売店) とレビューアーの2者 (これに加えて、たぶんメーカーも含めた3者) のあいだに、平等に見える関係が成り立っていることを大いに評価にしたいですし、このような関係がつくられ維持されてきた仕組みにも興味をもっています。