on outline processing, writing, and human activities for nature
ぼくはイギリスの旧い車が好きなのですが、Mini というぼくたちの車の整備や修理をお願いしているガレージのおっさんは、1960年代前半、四才のときにモーターショーか何かでたまたま見た Mini を大好きになり、その好きが高じて今の仕事をはじめ、30年以上つづけてきたそうです。
彼は、国外のラリーにも自分のつくった Mini で参加しつづけています。その理由も明快で、ラリーでは、車を限界ぎりぎりで走らせることができるから。
エンジンやサスペンション、ボディなどに普段の街乗りではできない負荷をかけ、反応を観察できる。そのデータを蓄えて、20年いや30年以上安心して乗りつづけられる車をつくる。
*
余談になりますが、彼は、よくこう話しています。
たとえハイブリッドカーや電気自動車であっても、それを生産する段階、あるいは廃棄する段階で、燃費の良さを上回る CO2 や NOX を出すようであれば、しかも、たとえば10年足らずで壊れたり、部品の生産が終わり修理できずに別の新車を買わないといけない車であれば、それは地球にやさしくない車である。
車一台の環境負荷を評価するには、燃費だけでなく、生産工程から廃棄まで、そしてその車に乗りつづけられる寿命も考えるべきである、というものです。
*
で、その彼なのですが、ラリーなどでの成績や実際にレースの様子を見た英国の団体から、たしか相談役のような役職に就いて欲しいとオファーを受けたこともあるのだとか。英国で品質の良い旧車を長く残す活動をつづけている、歴史ある大きなグループです。
でも、彼はすぐに断りました。現場で車をつくる時間がなくなるから。彼は、体が動かなくなるまで英国の旧車を整備したり、チューニングしたり、いじりつづけたいのだそうです。
名誉ある役職に就いて有名になるよりも、好きな Mini と対話しつづける道を選んだのです。
彼もまたフィールド主義なのかなと、英国車のことを語りはじめると止まらない彼の顔を見ながら、思いました。