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ecology of biodiversity conservation

notes

on ornithology, ecology, conservation of biodiversity, natural history, evolution, outliner as a personal dynamic media, and writing


フリーライティングで生活のアウトラインを育てる. August 8 2015

アウトライナー最大の長所のひとつは、フリーライティングを使ったアウトライン・プロセッシングの道具として使いやすいこと。

フリーライティングとは、たとえば10分あるいは20分でもいい、自分の決めた時間とにかく書きつづけるプロセスを指し [1]、そのあいだは、文法やスペル、漢字や仮名づかいなど、書くこと以外の問題は気にせずに書きつづける、あるいはタイプしつづける。

学生のレポートから専門書まで、あるいはブログの記事や小説など、さまざまな文章を書く人たちが、Writer’s block(どうしても書けなくなる状態)を乗り越えるため、そして効率よく書き続けるための方法として、紹介されることが多い [2]。

そしてフリーライティングには、それ以上の機能があることも、たぶん広く知られている。それは、気づいていないことも含めた自分の頭の中にあることを、文章を書くことをとおしてはっきりさせながら考えを進める効果、と呼べばいいだろうか。

ぼくは、このフリーライティングが、アウトライン・プロセッシングを実践する上でとても有効なものだと思っている。残念ながら、その方法のまとまった解説はごく限られた数しかないが、その中で一番のお薦めは、まちがいなく『アウトライン・プロセッシング入門』[3] の「2.3. 発想から文章化までをアウトライナーで行う」である。

(この解説を、母国語で読めることが、しかも平易で無駄のない文章で読めることがどれほど幸運なことか、ぼくは日が暮れてまた昇るまで語ることができる ← 無駄な文章)

先に書いた記事「しるしに迷わない方法」で説明したやり方が、自然科学などの仮説検証プロセスをベースにしているのに対し、このフリーライティングから始まるプロセスは、もっと自由で気楽な感じ。厳密には、フリーライティングを使った方法の特殊型が、問いを設定して答えを作文する方法だと、ぼくは考えている。


フリーライティングするのは、いつでもいい。毎日やってもいいし、気が向いたときにやるのでもいい。3-4年前から1年半くらい、毎日10–20分のフリーライティングをつづけた時期があったけど(これは Morning pages [4] というアイディアの影響もあった。毎日書きつづけることで得られる効果を重視している)自分には合わなかった。今は、フリーライティングをする回数は、平均すると月に4回くらい。気が向いたときに書く、というのがぼくには合っているし、効果も大きい気がする。

毎日というしばりをとっただけでなく、とにかく何でもいいから頭に浮かぶものを書きつづけるという形のフリーライティングも、あまりやらなくなった (ただし、このとにかく書くという作業も、とても大切なものだと思っている。その機能については、また別の機会に)。そして、どちらかというとテーマを緩やかに決めたフリーライティングがほとんどになった。


それはたとえば、何かを読んで心が動いたときのフリーライティング。

ある本や論文を読んで感動したとする。これはすごい、ぜひ自分の生活にも生かしたいと思ったとする。そんなとき、何がすごいと思ったか、なぜすごいと思ったかを、思ったとおりに書いておく。フリーライティングだから、テーマが逸れたりしても気にせず、書きつづける。だから、これは読書ノートとはちょっとちがう、もう少し自由なもの。

いわゆる読書ノートにもアウトライナーを使っているから、このフリーライティングは、その読書ノートの延長のときもあるし、まったく別項目にするときもある。それが許されるのも、アウトライナーのいいところ。

そして、そうしてできた文章をベースにしたアウトライン・プロセッシングを、これまた自由な感じで進める。アウトラインをつくったり、そこに文章を割り当てたり、それに合わせて本文を書き直したり、またアウトラインをつくり直したり。それを一気にやるときもあれば、隙間時間で少しずつやるときもある。

ただし、ひとつだけルールを決めていて、ひととおり文章を書き上げたあと、必ずタイトルになるようなセンテンスをつくるようにしている。『アウトライン・プロセッシング入門』で「テーマの明確化」と呼ばれる部分である。そのタイトルセンテンスは、文章の内容をひとつか2つのセンテンスに凝縮したもの。このタイトルセンテンスをつけるだけで、自分のフリーライティングのリストが俯瞰しやすくなる。そして、時間が経っても、読み返したり書き直したりする気持ちが湧きやすくなる。

ひとつのセンテンスにまとまらないときは、2つのグループに分けてそれぞれのタイトルセンテンスをつくる。2つで無理なときは3つに分ければいい。どのグループにもおさまらないものも、もちろんよくある。それはたとえば「free writings at 633 on August 7 2015」といったタイトルをつけて、まとめておき、気が向けば見直すことにする。2度と見ないことがあっても、まあ、それもいいことにしておく。

こうしてできた、本や論文を読んだフリーライティングのタイトルセンテンスは、たとえばこんなものになる。

  • 港の海に浮かぶカジキの残骸から、老人と海との尊厳をかけた戦いに気づくような洞察力をもちたい。
  • よい例題がつくれないなら、まずは自分の理解が浅くないかを見直そう。
  • 生活のアウトラインを育てよう。
  • 一度陸にあがった脊椎動物が、海にもどった進化の回数は過去2億5千万年のあいだに32回。いずれも四肢に同じ進化が起こっている。
  • サンゴ礁の生物多様性は、地球上で東南アジアがダントツ。何度もあった氷河期にここだけがレフュージアとして残ったから。

もう少し実際的なテーマで、フリーライティングもすることも多い。

たとえば、ぼくの場合、年に何回かお祭りのような大忙しの時期がある。ただでさえ忙しいときに急な仕事が入り、もうどうしようかと思ったときがフリーライティングのチャンス (?)。その大忙しを乗り切る自分なりの対策案や (姑息な?) 愉しみ方を書き出していく。

そのタイトルセンテンスはこんな感じ。

  • どんなに効率が悪いと感じても、午前中は原稿を書きつづける。他のことはしない。
  • 発表スライドを、制限時間を設けて一気につくってみる。まずは2時間。
  • 500人規模の学会大会の運営に必要なアルバイト数は10人。ただし、受付の忙しい初日をすぎれば8人、場合によっては6人でよい。
  • 次の野外実習の最初の10分は、英語だけでやってみよう。それが当然という感じで。
  • 次の発表ポスターは、全部手描きにしてやろう。そのために使いやすいペンやクレパスも見つけておこう。

普段は、このタイトルセンテンスだけが見える形に折りたたんでおく。そして、タイトルセンテンスをゆっくり眺めながら、気になったものを開き、作業を再開する。ある程度タイトルが増えてきたら、それらを減らすことも意識する。ぼくの場合は、ひとつの画面に収まる程度の数を目指すようにしている。

タイトルセンテンスの数を減らそうとするのは、それが自分のものである、という感覚をつくるため。そして、その文章たちのダイナミクスをつくりだすため。

数を減らすためには、複数のタイトルとその下の文章をひとつにまとめたり、不要と思うものを削除する必要がある。「階層を重ねた小さなアウトラインを育てる」にも書いたが、数を減らそうとする意識が駆動因になり、アウトラインと本文との相互作用が進み、センテンスや文節を単位にした自然選択のような現象が生じる。

アウトライナーに文章を入れるだけでも、テキストデータはダイナミックに管理しやすくなっている。しかし、ぼくはもっと積極的に、そして勇気をもってダイナミクスをつくり出す必要があると考えている。そう、「穏やかな夜に身を任せてはいけない」。

複数のタイトルの文章をまとめる作業をアウトライナーで進めるのは、それほど難しくない。これまで、タイトルの下にある文章でやっていた作業の階層をひとつ上げるだけで良いはず。もちろん、それらのタイトルが平等な階層にあるとは限らない。あるタイトルの文章が、別のタイトルの一部におさまるときもある。

一方、自分が書きためた文章を削除することには、抵抗を感じる人も多いだろう。そのハードルを自然に越えるコツとしては、いらないとおもうタイトルセンテンスをしまっておく「ゴミ箱」をつくり、押し出しファイリング [5] のやり方に倣ってタイトルセンテンスを整理する。

具体的には、気になって一度読み直したり、手を入れたタイトルセンテンスは、リストの一番上へ移動する。手をいれる必要がなくても、大切と思ったら、これも一番上に置く。この作業を繰り返すと、あまり気にならないタイトルは、だんだんと下へ移動する。最底辺にあるものほど、自分が読み返したり、手を入れていない時間が長いものになる。それをゴミ箱に入れる。しばらくゴミ箱に入れておいて、たとえば6か月か1年、そのタイトルの文章を開くことがなければ、削除する。


こうして、フリーライティングから生まれた文章のあるものは大きく育ち、新しいプロジェクトの出発点になるときもあれば、これから書く論文の序文や考察の中でぜひ使いたい、とっておきのセンテンスやパラグラフになることもある (この文章が、何10、何100のセンテンスから生まれたことは知る人ぞ知る.. ニヤリ)。

あるいは、あの大忙し祭りをやり過ごすための小さな tips になるものもあれば、何といったらいいのか、朝の空気をおいしいと思えるような、エネルギーのもとになったりするものもある。

もちろんこの記事も、フリーライティングから始まった文章である。


最後にもうひとつ。このフリーライティングを長くつづけると、大きなご褒美があることにも触れておきたい。

時間の経過は、書いたものを俯瞰しやすくしてくれる。自分にとって本当に大切なセンテンスを見つけやすくなる。書いたときには予想もしなかった、別のタイトルと見事に融合できることが、自然に見えたりする。つまり、誕生が古く、何度も書き換えられたりしながら残ってきたタイトルセンテンスとその下にある文章たちは、あなたの時間がつくりだした、今あなたのいる高みから見た大きな景色なのだ。

これが、生活のアウトラインを育てるということかなと、考えたりしている。

  1. Tak. 2012. フリーライティングの道具. WordPiece
  2. Wikipedia. Free writing.
  3. Tak. 2015. アウトライン・プロセッシング入門.
  4. Cameron J. 1997. Artist’s Way. Penguin Putnam Inc, New York.
  5. 野口悠紀雄. 1993. 「超」整理法. 中公新書


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