gofujita notes

on outline processing, writing, and human activities for nature


万年筆の書くメカニズムを考える #2

(万年筆の書くメカニズムを考える #1 のつづきです)

自分で考えたニブ (nib、ペン先) 構造の考えの妥当性を確かめる題材として、Lamy というドイツの有名なペンメーカーの Safari を使うことにした。新しさを感じるデザインだけど、このおしゃれ万年筆が生まれたのは1980年。40年近く前に生まれた、伝統ある万年筆。

フランスやドイツでは、多くの小学生や中学生が普通に使い、このペンで文字の書き方を覚えるのだと、このあいだカフェで会ったフランス人のビジネスマンから聞いた。

(おっさんなので、カフェで出会った人と話しが盛り上がったりします。ポートフォリオ・アナリストという肩書きの彼は、Dialog という Lamy の万年筆を使ってました。ペン先が軸の中に収まるかっこいいデザインだけでなく書き心地も抜群だそうです。もう何年もこのペンでしか書いてないとか)

Safari は値段も比較的手頃で、何より「分解してくれー」というメッセージいっぱいのデザインだと、ぼくは勝手に思っている (笑)。

とくにペン先の裏側、ニブがフィードにとりつけてある部分をみると「分解してくれー」が聞こえてくるようで、ちょっと嬉しくなるつくり。

まずは思い切って、このニブを外す。ニブに変な力をかけないため、スコッチテープをニブの表側全体にくっつけて、少し引っ張ると意外なほどかんたんにニブが外れる。

フィードの上面、ニブがついていた部分には予想どおり溝があったけど、予想とちがって二本だった。フィード先端から 1mm ほどのところから溝が始まり、先端から 5mm くらいの位置で、溝はフィードの中へ潜っているように見える。

つまり、フィード先端のインクの細い管は二本あり、その管がフィード上面とニブ下面の接する隙間で一度広がったあと、ニブ・スリットの一本にまとまるという形をとっていることになる。思ったよりも複雑。

つぎに、フィードをセクション (section) から外す。しっかり入っているので、ぼくは薄いゴム版で左右から親指と人差し指でぎゅっと挟んで引き抜いた。粘着力の強いガムテープをフィードの上面や下面につけて引っ張るのでも大丈夫。

フィードの全体の長さは 46mm。セクションから外に出ていた部分、つまりニブがついていた部分の長さは 14mm。フィード全体のおよそ三分の二が、セクションの中に入っている。

フィードのセクションに収まる部分は、円柱状 (直径 7mm 弱) で、その円柱を横に置いて上側、3mm 幅くらいの天井部分を後端側にスライドさせて外すと、フィード中心部を縦に走る二本の溝が見える。ここにインクの細長い管ができるワケだ。

そして、フィードのインクタンク側の部分で直径 7mm の円柱が終わり、そこから直径 2mm の細長い突起のような円柱が突き出ている。その突起の上面にも、同じ二本の溝が走っていて、この溝がフィードの先端、ニブがつく部分にまでつながる深い溝になっていることが分かる。

そして、フィードのインクタンク側の部分で直径 7mm の円柱が終わり、そこから直径 2mm の細長い突起のような円柱が突き出ている。その突起の上面にも、同じ二本の溝が走っていて、この溝がフィードの先端、ニブがつく部分にまでつながる深い溝になっていることが分かる。

さらに、細長い突起の上面では、二本の溝の上五分の二くらいがひとつの太い溝になって、インクが通りやすくなっている。この細い突起が、セクションの中心にあるトンネルにおさまり、その反対側にインクタンクであるコンバータの先端がうまくはめ込まれるという構造。

なるほど、なるほど。これでタンクからニブの先までつながるインクの細い管をつくる溝の形が大体分かったかな。溝は二本で、フィード円柱の中心から上端までのとても細くて深い溝ってことが新しい発見。

さてつぎは、インクタンクへの空気穴。はたして予想どおりフィードの裏側にあるのだろうか。

(つづく)