on outline processing, writing, and human activities for nature

文章をつくるとき、キーボードをタイプするリズムが、直接文章にも影響するように感じます。そして、キーボードの操作に、アプリケーションやカーソルがどう反応するかも、そうした道具でつくる文章のリズムに影響する感覚があります。
たとえば、英語をタイプしているとき。その独特のリズムをつかって、文章をかき進めている感覚があります。
shiftキーを押すタイミングをS、returnキーを押すタイミングをRで示すと、こんな風になるでしょうか。
単語S単語S単語S単語.R(改行)
単語S単語S単語.SS単語S単語S単語S単語.R(改行)
spaceを小刻みに叩きながら、たまにあるreturn。右親指と左親指でホームポジションのまま、タイプできるアルファベットキーのあいまにspaceを繰り返し、ひと区切りを強調するホームポジションからややとおいreturn。
このリズムを感じる中で、場合によってはリズムをつくるために、文章をかいている感覚があります。
一方、日本語をタイプしているとき、ぼくだけかもしれませんが、リズムをつくり難いように思います。たぶん、みなさんご想像のとおり、かな漢字変換と確定の操作が入るからだと、ぼくは考えています。
たとえば、こんな感じ。
ひらがなSSR (確定) ひらがなSSSR (まだ確定) ひらがなSR (まだまだ確定) ひらがなSSRR (やっと改行!)
ひとつのセンテンスだけでも、returnが何倍にも増えます。くり返しかいてきたことですが、returnキーを押すためには、ホームポジションからわずかに右手をずらすことになります。だからできれば、returnを押す回数を減らしたい。
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shift+spaceで、かな漢字変換を確定する、という方法は、その解決策のひとつ。このやり方で日本語をタイプするあいだのshiftと、shift+space (SSで示します)、そしてreturnを押すタイミングは、こんな風になります。
ひらがなSSSS (確定) ひらがなSSSSS (確定) ひらがなSSS (確定) ひらがなSSSSR (改行だぜ)
returnを押す回数は1回に減りました。spaceを繰り返し押した流れで指はその位置のままshift+space、という英語をタイプするときとはちがいますが、押しやすいspaceバーの連続でつくるリズムです。
たまにあるreturnを押すとき、ホームポジションから、少し右小指を伸ばしてreturnする、あるいは、右手全体をワザと少し上げて中指とくすり指で強くreturnする動作も、心はずむようになります (笑)。
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残念ながら現時点の macOS では、shift+spaceで変換確定する設定方法は限られています。
ぼくがしっているのは、日本語入力プログラム (以下 IM) をかわせみにして、かな漢字変換の確定キーを変更する、というやり方だけ。 かわせみは、カスタマイズのしやすさと、変換の軽快さが魅力の IM です。
設定の手順を短く紹介すると:
spaceを押すこれでshift+spaceで変換候補が確定されるようになります。
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ここにかいたワザ、shift+spaceで変換確定に設定し、shiftとshift+spaceを小刻みに繰り返しながら文章をかくリズムをつくること、そして IM かわせみでその設定が可能であることのふたつは、アウトライナー論のTak.さんから教わりました。
Tak.さんによると、このかな漢字確定でリズムをつくる方法は、単語ごと、文節ごとといったできるだけ小さな単位で変換確定するのがコツ。そして、変換候補確定の操作と改行という操作を明示的に区別し、それを体感できる点も大切かもしれない。
教えていただいたのは、2020年5月でした。ぼくといっしょにshift+spaceミームを継承したHibikiさんによると、Windows でもこの設定は可能とのこと [1]。
初めて出された緊急事態宣言がつづく2020年の5月初旬。少なくとも2人の人間 (ひとりはサルかもしれない) がこの世界を覆うreturnの呪縛から自由になったのです (涙)。
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いかがでしたか?
え、かな漢字の変換も、returnの位置も、大して気にならない?
たしかに、そのとおり。それはそれで、もちろんヨシ。
たかが、かな漢字変換の確定。そして、たかが 1cm だけとおいreturn..。
ここでぼくが伝えたかったことは、変換確定のキーバインドや、それでリズムをつくるというワザそのものでは、ないのかもしれません。
ここでお話ししたかったのは、たとえば文章をかいている自分が、何を大切と感じているのかを理解してあげようとする姿勢。そして、そこに自分ならではの、自分のかき方に根づいた「ちがい」をみつけようとするスタイル。
そして、そのちがいを敢えて強調することで、自分の文章をかきやすい道具を、自分の気もちといっしょに育てられるかもしれない、という仮説。
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このウケウリ記事は、2年4か月前に IM かわせみやshift+spaceワザを、おしげもなく教えてくださったTak.さんや、returnキーがちょっと遠いんじゃないか論争 (?) をいっしょに盛りあげてくださったHibikiさんと倉下さんに感謝と尊敬の気もちをこめてかきました。
文責はもちろん、ぼくにありまくりです。
では、今日もよいポメラがみなさんとともにありますように。
May the Pomera be with you..
shift+spaceの設定方法を、Hibikiさんが 「キーバインドでリズムをつくる」より で説明してくださいました。