on outline processing, writing, and human activities for nature
『ブラボー、ブッロ!』を読みました。120ページ前後の小さな作品です。ジョン・ファンテとルドルフ・ボルヒェルトの共著で翻訳は栗原俊秀さん。発行は「くりたりあ」と奥付にあり、栗原さんの自主出版のようです。
たくさんの人に読んで欲しいと胸を張ってオススメできる作品だと思っています。
北メキシコの大きな牧場(メキシコのことばでハシエンダ)で働く父と二人でくらす少年マヌエルと、彼に出会ったロバ、エル・バリエンテ(すごいやつという意味)の物語です。マヌエルがロバとピューマと闘いを目撃するところから、物語は始まります。ドラマのようなプロットのしっかりした展開。
人々から恐れられそして尊敬されている山のように大きな雄牛、モンターニャ・ネグラがもう一方の主人公。彼の偉大さがあってこその物語でもあるとも思います。
小中高校生など若い人たちのために書かれた物語で、ファンテの他の作品とちがうところも多いのですが、たとえば牧場やその周囲の大きな風景や、飲んだくれ親父フアン・カブリスのシーンのリアルさがファンテらしいと感じました。
そうそう、古き良き牧場主の誇りをもって生きるドン・フランシスコはほんとかっこいい。ドンの息子カルロスと、恋人でありマヌエルの先生でもあるリンダ・ヘルナンデスとの関係の描き方もさりげなく心地よい。
飲んだくれフアンの起こした事件とその顛末が物語半ばのヤマ場であり、そのフアンがそのあとやらかしちゃったもうひとつの事件(またかよ、この親父はまったくホントに笑)から始まるマヌエルとエル・バリエンテの冒険がクライマックスでしょうか。
栗原さんがどこかでお話しされていたかも知れないですが、ファンテの描く動物には、他にない魅力があります。ファンテの他の作品のように、突っ走り過ぎる熱くて痛い、思わず恥ずかしさで目を覆うような主人公は出てきません。
日本語で読んでいるのに、マヌエルたちが語るメキシコのことばが聞こえてくるような文章です。