on outline processing, writing, and human activities for nature
きょうの朝は、いつもより冷える。
人は分厚い上着をきて、襟をたてる。
子どもたちも、なんでこんなに寒いのかと
身がまえをする。
冷たさを、みることはできない。
冷たさに、色はついていない。
そのことが、なんとも洒落ている。
物理学は、その透明の中にある運動で
この寒さを描きだした。
その意味で
物理学者は詩人のような人たちだと思う。
そして冷たい風は、空間をわたる。
この冷たい風は、あの房総の森をゆっくり歩く
サルたちの毛をなびかせたのと同じ風。
あの灰色にまざる白い柔らかい毛を
なびかせたのと同じ風。
この冷たい風は、あの房総の森をつくる
スダジイの葉を揺らせたのと同じ風。
あの深い緑の葉のおもてと
赤銅色ににぶく光る葉のうらを
揺らせたのと同じ風。
それだけで、ぼくは十分と思う。