gofujita notes

on outline processing, writing, and human activities for nature


Sully1

If you look for human error, do make a human (人為ミスの要素がなかったか調べているのなら、そこに本当の人という要素を入れてほしい).

今年みた中で1番の映画は『Sully』。邦題は、ハドソン川の奇跡。

ニューヨークのラガーディア空港を飛び立ってすぐ、バード・ストライク (カナダガンの群れが飛行機にぶつかった) によって両翼エンジンが壊れ、ハドソン川に着水した旅客機のキャプテン、サリー Chesley “Sully” Sullenberger という、ひとりの人間を切り口にした物語り。

Humanity を描いているのだけれど、サスペンス仕立てにもなっている。はたしてサリーは、乗員155人をわざわざ危険にさらすという人為ミスを犯した「人」なのか、どう考えても助かりようがないように見えた状況から、全員を救うという奇跡を起こした「人」なのか。

だから個人的には、原題 Sully の方が、映画の内容に合ったタイトルだと感じた。それが「奇跡」だったのかどうか、物語りを追いながら考えていく映画なのだから。現実の結論をしらない人はもちろん、しっているはずの人でも、どきどきするような形で、サリーという人と周囲との出来事が、淡々としたリズムと絵をとおして描かれる。

空港を離陸してからハドソン川に着水するまでのシーンが、何度も繰り返される。それぞれのシーンは似ているけれど、少しずつ視点を変えているところが、緊張感を高めてくれる。

圧巻は、映画のちょうど真ん中あたりに置かれた、長めのシーン。サリーたちが飛行機に搭乗するときから、全員が救助されるまでの時間が、あいだにサリーが軍隊でパイロットをしていた頃の回想シーンを挟んだ形で、リアルタイムのように描かれている。音楽も最小限に抑えられている。

サリーとファーストオフィサー (副操縦士) のジェフの場面から始まり、鳥の群れとの衝突のあと、管制官との緊張したやりとりに移る。回想シーンのあと、ハドソン川をわたるフェリーや、おそらくこの地域を担当するレスキュー隊のスタッフの視点から入り、乗客の待避を懸命にオーガナイズするサリーとキャビンアテンダント、緊張した表情で自分の恐怖を抑えながら外へ移動する乗客、かけつけるフェリーとヘリコプター。さらにはマスコミの視点も織り交ぜながらシーンは進む。その解釈を説明するような台詞はない。

そしてクライマックス。大きな会議室の前で深呼吸するサリー。これから彼は、この事故に「人為ミス」の要素はなかったかを調べる委員会に臨む。シミュレーターで実際に「人」が操縦しながら行なうシミュレーションが2種類、ライブで中継される。これも、サリーの希望によって実現したものだ。ここでのサリーやジェフと、委員たちとのやりとりには、本当にたくさんのメッセージが込められている。

人が人だからこそ犯す過ちがある。その過ちを防ぐために、ぼくたちは何をすべきなのか。そしてもし、過ちが起こってしまったら、その被害を最小限にするために、ぼくたちは何をすべきなのか。

Humanity というものを理解し、事故に関わった人たちの humanity を尊重し、それぞれが自分の立場で humanity を実践することが、その答えを見つける鍵になる。台詞や短いシーンだけではなく、物語り全体をとおしてとして、大きなメッセージを見事に描いた映画だと思った。

物語りの最後に出てくるサリーの台詞は、真ん中あたりに出てくる、リアルタイムのように感じる離陸前から全員救助までのシーンがあってこそ生きてくる台詞であり、その後につづくジェフのアメリカンジョークで、みんなが笑ってしまうのも、あのシーンがあるからこそだと思う。

そして、エンディング。あれをみたら、涙もろいおっさんのぼくでなくても、みんな人間に生まれてよかったと思うんじゃないだろうか。

  1. 記憶に頼って書いたため、最初に公開した記事に一部にまちがいがありました。物語りの真ん中あたりの話しです。少し修正しました (January 12, 2017)