gofujita notes

on outline processing, writing, and human activities for nature


始めている仕事で根を生やす

始めている仕事」についてもう少し考えたい。

まずは制約の効果について。

ぼくたちの行動の選択肢の流れは、未来に向かって無限に広がっている。

たとえこの瞬間に、選択肢が2つしかない場合でも。

仮にあなたが1時間に1回、2つの選択肢からひとつを選ぶことができるとして、この2時間と少しうちに選ぶことのできる選択肢の流れは、2の3乗、つまり8とおりあることになる。

具体的に書くと、今の選択肢がAとB、1時間後の選択肢がMとN、2時間後のがXとYだとすると、2時間を少し過ぎた選択肢の流れには、A-M-X を選んだあなたの流れと A-M-Y のあなた、そして A-N-X のあなたと A-N-Y のあなた … という形で B-N-Y まで8とおりのあなたの可能性がある。

仮に、今日9時間と少し作業して10回選択肢を選ぶことができるとき、ぼくたちは途方にくれる。2の10乗、つまり 1,024 とおりの選択肢の流れの中からベストなものなど探し当てられるはずがない。

実際の選択肢は2つより多いことが普通だし、1時間に1回どころか、数分に1回ごとに選ばないといけないこともあるだろう。

だから、ぼくたちは選べない。無限に見える選択肢の流れのすべてを予想してそのベストを選ぶことなんて、少なくともぼくにはできないし、やりたくもない。

ところが。

あなたには、始めている仕事があったとする。

例えば、きのうの午後6時まで作業した書きかけの文章があったとする。

そしてまずは、書きかけの文章を読み直す。そうすることで、あなたはきのうあなたが選んだ選択肢の流れを思い出し、その流れに沿った次の選択肢として、目の前にある選択肢AとBのどちらを選べばいいかを決めることができる。

それは、白紙の状態でつまりサイコロをふるような気持ちでAとBを選ぶより、ずっと楽にできるはずだ。

もしかすると、次の選択肢と、次の次の選択肢MとN、XとYのどちらを選ぶのが良さそうかまで見えるかも知れない。

とすると、3回分の選択を節約できたことになる。そしてその結果、あなたが探索すべき選択肢の流れの可能性空間は 1,024 とおり (2の10乗) から 128 とおり (2の7乗) にまで小さくなる。

これこそが、始めている仕事の制約効果だと、ぼくは考えている。

始めている仕事があることで、ぼくたちは、根を生やすことができる。根を生やすことで、選択肢を限定できる。

始めている仕事があることで、作業のために見渡す範囲を自分の意志に沿った形で安心して減らすことができるのだ。

そして、この制約効果は、文章づくりだけでなく他のいろいろな作業に応用できる。