on outline processing, writing, and human activities for nature
田んぼの生きものを研究している仕事がら、農家の人たちと知り合いになることが多い。そのほとんどが60歳以上で、半数より多くの方が70歳を越えた人生のベテラン。
そのベテランたちは口をそろえて、農業は儲からない、これから先の見通しが立たないと明言する。
だから、若い人たちに農業で暮らしていく生活を奨められないと、少し寂しそうな、でも割り切った笑顔で話してくれる。
そのベテランたちの子ども世代 (大体ぼくと同じ世代) は、農業以外の職に就いて暮らしている。でも、そういった職の数は、とくに地方では豊富と言えない。
農業では儲からないということは、田んぼや畑が広がる地域で暮らすことは儲からない、ということになる。そして人々は、都市へ移動する。
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なぜ、農業では儲からない仕組みが、出来上がってしまったのだろう。
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田んぼの生きものの研究をしている仕事がら、農家の人たちと知り合いになることが多い。そのほとんどが60歳以上で、80歳より上の方も普通。
その多くは、今も現役。田んぼや畑で、米や麦、野菜などをつくっている人がほとんど。
ゆっくり歩きながら畔の草を刈り、よっこいしょとコンバインに乗って稲を刈り、飄々とトラクターを操って荒起こしする。
採ってきた山ほどの野菜を庭の井戸水で洗い、台所そばの納屋に置いた瓶で漬物にし、裏の森のスギやミズナラを倒してチェンソーで輪切りにし、冬のあいだの薪をつくる。
いつも働いているように見えるけど、なぜか、仕事に追われているようにはあまり見えない。
たとえば、夏の夕方。
強い日差しが弱まり涼しくなり始めた頃、彼や彼女らは作業を再開する。そして、それがひと段落したとき、視線を上げて自分の田んぼを眺める姿をよく見かける。
西の遠くにある山々に太陽が差し掛かり、空がオレンジ色に染まる中、彼や彼女らは金色に反射する水を湛えた田んぼを眺める。向こうの森からは、子育てするノスリの声が聞こえてくる。
そのせいかどうか、彼や彼女たちと話していると、生きようとする力というか前に進もうとする熱が伝わってくることも多い。地面から湧いてくるような逞しさを感じることもある。
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この強いベテランたちを生み出した農業が、なぜ、儲からない、先の見えない仕事になってしまったのだろう。