on outline processing, writing, and human activities for nature
葉山の元町は、自宅のある鎌倉から電車で10分、さらに20−30分バスに乗ったところにある、海と森に挟まれた町。少し時間のできた休日に、彼女と二人でぶらっと歩くことがある。
とくに夏は、泳ぎに来た若い人たちであふれているけれど、昔ながらの漁村や浜辺の町の空気が残っていて、でもそれとはちがう自由と新しさ、誇りとほどよい古さも同居している。
個人的な感覚だけど、ややトーキョーになってしまった鎌倉の真ん中あたりより、ショーナンという匂いがほんの少し強く残っている。
車二台がやっとすれ違えるかどうかという車道沿いと路地裏には、レストランや定食屋、カフェや珈琲屋、ベーカリーやパン屋がたくさんあり、そのどこかで昼ごはんを食べるのも楽しみのひとつ。
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きのう食べた定食屋は Google すると、日本中の海辺にそれぞれ一軒以上ありそうな名前の店で、カウンターを入れて15人くらいでいっぱいになるようなサイズ。
女性のひとりが料理づくりを担当し、もうひとりの女性が接客を担当している。
メニューはたしか4−5種類で、たとえば「唐揚げ定食」といった日本のいわゆる定食屋さんでよく出会うものが中心。
で、これがほんとうに美味しかった。肉も野菜も、材料に自信がないとできないような、材料の美味しさを前面にだしたような味つけ。
唐揚げの肉のやわらかさと表面の歯ごたえだけでも十分だったけれど、一緒に揚げた野菜がすばらしかった。甘いさつまいもにかぼちゃ、ちょっと変わった形をしたほんのり甘いピーマン (お店の人はバナナピーマンと呼んでいた) に表面が淡い緑色した茄子 (これも普通の茄子とちがう)。近くの農家から直接届けてもらっている野菜なのだそうだ。
つけあわせのかぼちゃの煮込みと、えのきと玉ねぎのスープもよかった。他では出会ったことのない、味わいあるスープ。玉ねぎ苦手のぼくが、全部食べてしまったのは、ここだけの秘密。
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カウンターに座ると、料理するプロセスがゆっくり見られるのも楽しかった。雑然と、でも効率よく並べられたコンロや鍋に、調味料とたぶん自家製のソースが何種類。その中を、これまた効率的な動きで料理がすすむ。
彼女が注文した分厚いポークと野菜いため (メニューの名前を忘れました.. ごめんなさい) は、ぼくが予想していたより4倍くらい長い時間ていねいに炒められ、最後に鍋につくられたスープのようなものをたっぷり掛け、さらに、そのスープの水分が程よく蒸発するまで火を通していた。
静かな常連 (何だかやたら店の人に馴れ馴れしくない人) が何組かいたことと、少し恥ずかしがりで親切な店の人たちの人柄もかっこよかった。となりに座った女性は、食べ終わったあと、冷たい珈琲を飲みながら本を読んでいた。ゆっくり本を読むことのできる定食屋。
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女性が2−3人、自分たちで経営していて (= チェーン店じゃない)、いわゆる普通のメニューがあるところはいいお店が多い。これは、彼女とぼくが感じている、おいしいお店の法則。