on outline processing, writing, and human activities for nature
このところ、仕事に追われている気がして、それが気になっていた。理由は分かっていて、仕事が (公的なのも私的なのも) やや忙しいのに加え、野外調査のピークがもうすぐやってくるからだ。
生きものの野外調査はほんとうに水もので、天気だけでなく、生きものの事情によって、調査にかかる期間だけでなく、必要な調査地や方法、使う道具もどんどん変化する。だから、それに向けて心身ともに万全の準備を進めたいのだけれど、そういうときに限って、他の仕事が割り込む。そういうことが少しつづくと、仕事に追われているような気持ちになる。
こういうときは、自分の生活を眺めることを意識した、フリーライティングをすることにしている。
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まず、早朝でも昼休みでも、自分の時間を1時間つくる。珈琲の一杯でも用意し、アウトライナーを開く。できればその1時間の前後30分くらいも含め、メールや SNS のアプリケーションとその通知を、一切オフにしておく (ぼくは普段から通知をオフにしている)。
そして「my life synopses (生活のアウトライン)」という項目にまとめておいたリストを眺める。このリストは、以前、自分の生活のことを意識しながらフリーライティングした文章を、要約したセンテンスのリスト。この要約センテンスの下には本文が折りたたまれている。リストを眺めながら、気になった要約センテンスがあれば、その項目を開いて (ブーレットをクリックして) の中身を読む。
そして、リライティングする。
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フリーライティングの文章すべてが life synopses みたいなものなのだけど、この項目には、とくに大事かなと思ったものをまとめてある。自分の生活を眺めたくなったとき、まずはここから読めばいいよう集めてあるのだ。いまの「my life synopses」には、11個の要約センテンスが入っている。家族のことや時間の使い方大作戦、具体的な研究テーマやそのアプローチのアイディア、気になる社会問題などがごちゃまぜになっている。何年も育ててきた文章もあれば、1か月くらい前に新しく加えた文章もある。
強く意識していないけど、要約センテンスの数は10くらいに抑えるよう心がけている。たとえば100個もあるとすべてを読む気がなくなるし、文章を減らすプロセスは、考えを進める上で大切な役割を担っている。リストを減らす作業は、自分の生活に大切なものとそうでないものを決断する作業になるし、複数のリストをひとつにする作業は、項目を合わせることで新しい機能をつくりだす作業になることもある。
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今回は、そのリストを2−3分ゆっくり眺めたあと、上からひとつずつ、要約センテンスの下にある本文をゆっくり読んでいった。頭の中で音読する感じで。そして、気になった項目にフォーカスする。
気になったのは「自分の仕事をしよう」というセンテンス。1年前の5月中旬に書いたものだった。「自分の仕事は何だろう..」で始まるこの文章は、たぶん、今と同じ理由で、忙しさに追われている生活を俯瞰するために書いたのだろう。まずは、その文章全体のコピーをつくり、今日の日付をサブタイトルにする。そして本腰入れて読み直しながら、リライティングする。
1年前に精一杯考えて整理した文章だけど、今の自分から見ると足りない部分がある。それを補うセンテンスやパラグラフを入れる。逆に今の自分から見ると枝葉末節と感じた部分は削除する。リライティングすると、基本的に冗長さが減り、メッセージがシャープになる。また、前回書いた (リライティングした) ときから現在までの、自分自身の変化も見えてくる。
今回のリライティングでは、階層をあがるとまではいかなかったけれど、自分がこれから1か月、半年、1年でやりたいと思っていることの大枠を、見直す機会になった。大げさだけど、生きる覚悟を再構築できた感覚。もちろん、不安な気持ちが一気に解消、という訳にはいかないけど。
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もしあなたが、忙しくて忙しくて、何だか焦っちゃてるなぁと感じているとしたら、早起きして、あるいは昼休みにひとりの時間をとって、あなたの life synopses をリライティングしてみてはどうだろう。
フリーライティングのコレクションがない人は、焦った気持ちをそのまま書き出すだけでもいい。そうそう。いい本や論文を読んだり、素敵な映画を観たり、雄大な風景を目の当たりにしたり、すごい人に会って感激した時にも、その気持ちをフリーライティングして my life synopses に集めておくのも効果的。
道具もアウトライナーに限ることはない。情報カードに手書きして、かっこいい木製の携帯キャビネットに集めても楽しそうだし、お気に入り Moleskine のノートに、手書きの文章を集めてもいいかもしれない。
要は、自分の生活に関係する文章のリストを眺め、そのひとつか複数の文章を、リライティグしながら育てればいいのだ。