gofujita notes

on outline processing, writing, and human activities for nature


ヘミングウェイ

初期のヘミングウェイの魅力は、たくましくて繊細な自然の描写と、大きな自然やそこから離れた場所で何処かへ進もうとする人の生活をどう切り取るとるのか、その断片のつくり方なのかなと感じている。

説明はできるだけしない。

ニックがどこで生まれ、どんな仕事をしているのかは問題ではない。彼はとにかくシーニーで汽車を降り、焼き尽くされた丘を流れる川でくらすマスを細やかな目で観察し、職人的なこだわりをもって野営テントを張り、フライパンで温めたポークと豆の缶詰だけでなく、空腹感までも満喫する。

そして、釣り餌になるバッタを採り、マスたちを釣り、あるいは逃し、別のを釣り上げ、また野営している場所へと戻る (2つの心臓の大きな川. Big Two-Hearted River)。

1919年。イタリア画家の作品に感激し、お気に入りの画家フランチェスカの複製を共産党の機関紙『アヴァンティ』で包んで持ち歩いている彼が、世界革命を信じているのは確かなのだが、イタリアに来た理由や、その彼をボローニャからローマまで連れて行った私が誰なのかを、一言で説明したりしない (革命家. The Revolutionist)。

競馬騎手の父と競馬場で出会う馬たちを大好きな少年ジョーが、ミラノとパリで過ごした日々から、何を学んだのかを俯瞰したりしない (ぼくの父. My Old Man)。

断片それぞれが世界であり、その組み合わせも世界である。そして、断片を並べるというやり方でしか、伝えることのできないものがある。