on outline processing, writing, and human activities for nature
結局老人は、カジキを釣り上げることができたのか。いや、それは問題じゃない。老人は人生の終わりに最高のライバルに出会えた。でも老人は老人で、カジキはカジキとして生きる(Bob McCall,『Equalizer』の主人公)。
通勤の途中、大きな駅のスターバックスで、『老人と海』を読んでいる人を見かけた。これまたほんと、楽しそうに。
スーツの似合う、おそらくやり手の中堅という顔つき。彼は大きなカバンなどもたず、薄くて小さめのアタッシュケースを静かに椅子の横に立ててある。
近くに外資系商社が多いのか、同じくスーツの似合うヨーロッパ系の人たちや英語が普通の、忙しそうなスターバックス。
でも、彼のまわりは静かだった。ゆっくりページをめくる音が聞こえてくるかのように。
この組み合わせにすこし驚いたぼくは、小説がすばらしい道具になることに初めて気づいた。それを「気分転換」や「元気づけのため」と呼ぶと、大切なものが隠れてしまう。
だって仕事の前に『老人と海』を楽しそうに読むんだから。