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ecology of biodiversity conservation

notes

on ornithology, ecology, conservation of biodiversity, natural history, evolution, outliner as a personal dynamic media, and writing


Smalltalk and outliners. December 20 2014.

1970年代、Dynabook や Smalltalk で有名な Alan Kay と Adele Goldberg は、子どもも含めたすべてのユーザーが、自分の望む機能を自由につくりだせる外部装置 (ハードとソフトウェア) の実現を目指していた [1]。それは、たとえ開発者が想定しなかった用途であってもユーザーが気軽に希望を実現できる「粘土のような」システムである。彼らは、人々がその装置を使うことによって、頭の中で起こる思考を具体化し、そのフィードバックを通して思考過程をよりクリアにできる、と考えていた。

この Dynabook と Smalltalk を現在のスマートフォンやタブレット、ラップトップ、その OS やアプリケーションと比較すると、今のシステムには、このユーザー個人が自分の欲しい用途を備えたソフトウェアを自由につくる、という機能が大きく欠けていることが分かる。

私は、この大きなギャップを埋める可能性のひとつとして、アウトライナーというソフトウェアがあると考えている。アウトライナーは、データベースであり、データを操る簡易ソフトウェアをつくる場でもある。ただしその機能は、テキスト情報のみを扱えるという限定つきであるが..。たとえば、アウトライナーのファイル上で作成できる簡易ソフトウェアとして、以下が挙げられる。

  1. テキスト情報のデータベース
  2. カレンダー
  3. GTD ツール
    • to-do list
    • プロジェクト進行の記録
    • プロジェクトアイディアの記録
  4. 原稿作成支援ソフトウェア
    • 原稿のアウトライン作成
    • 下書き原稿の作成
    • 下書き原稿の論理構成の確認とリライト
    • 完成原稿の保管
  5. 論文や本の理解を支援するソフトウェア
    • 論文や本の本文などの読み込み
    • そのアウトラインの作成
    • 読書ノート

アウトライナーの長所は、これらのすべてを同じファイル上で実行でき、これらの作業を自由に行き来できることである。つまり、アウトライナーひとつのファイルは、データベースであり、データ加工の場であり、そのプロセス記録の場であり、完成品保管の場でもある。

このテキスト情報が織りなす樹状のファイルは、蓄積され続けるデータが新しいアイディアを生み出す場や、それらをもとにしたアウトプット作成の場になるだけでなく、その相互作用を通してさらに新しいデータベースをつくりだす場としても機能する。これは、Kay らが考えたダイナミック・メディアに近い。

私はこのアイディアを Dave Winer の Scripting News と @takwordpiece による Word PieceHappy Outlining! の記事を通して学んだ。もちろん、今のアウトライナーと Kay らが夢見た Smalltalk のあいだには、大きな隔たりがある。しかし、アウトライナーをテキストベースのダイナミックなデータベースとしてとらえ、かつ、テキストデータの構造を自由に編集する簡易ソフトウェア開発の場と捉えながらシステムの改良を進めることで、そのギャップが埋まる可能性があるのではないかと考えている。

そのシステムが目指すのは、人々が欲しい情報を蓄えながら自由に構造化し、たとえば今晩の買い物の段取りから10年後の地球環境問題の対策まで、日々出会うさまざまなスケールの問題の解決策を、自立して考え実行するプロセスの支援である。

1: Kay A, Goldberg A. 1977. Personal Dynamic Media. Computer 10, 31–41.

*: この記事は、12月7日 ideaSquare で公開したものです。



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