宇宙から地球をみると、太陽の反対側は限りなく本当の漆黒。そちら側に月があって、その照り返しを受けていない限り。
太陽の側は、地球を地球にしている青、そして白。
でも、見るべきものは、漆黒とまぶしい青のあいだ。光をだす太陽も照らされる地球も丸いので、そこは少しだけぼやけた境目になる。青と白と漆黒が混ざる、燻んだ境界線になる。
たとえば、東京の職場近くにある珈琲屋で大きな窓のそばにすわったとき、そして、ビルの狭間にある路地を通して見える富士山に夕日が重なり始めたとき、この窓辺の珈琲とそこからたちのぼる湯気は、半影の中にいる。
富士山とこの珈琲の距離は101km。円錐形の山から、ながくながくのびたギザギザの影の中にこの珈琲がある。
それが境界線の奇跡であり、この宇宙の当然でも、ある。