on outline processing, writing, and human activities for nature
人を、文系か理系かといった形で分類するのは、あまり好きではない。でも、似ているけどちょっとちがう、もしかするとおもしろいかなと感じているグループ分けがある。
そのグループに名前をつけるとしたら、「ものがたり系」と「メカニズム系」。
ここでお話しすることは、ぼくの奥さんから随分前に聞いた話しで、記憶もあいまい。だから、まちがい満載かもしれないけれど、今も大切だと考えているエピソード。
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それは、彼女が小さな自然保護区でレンジャーという仕事をしていた頃の話し。
その保護区で長くボランティア活動をしてきたTくんが、木でできたおもちゃを手に、ボランティアのPoさんやMさんと、ビジターセンターで、何やら盛り上がっている。
Tくんがもっていたおもちゃは、たしか、立ちあがった木彫りのネズミ1匹とどんぐりひとつが、木の台に置かれたもの。台は手のひら大で、ネズミもどんぐりもその上に乗るくらいのサイズ。
台には、ネズミやどんぐりと全然ちがう場所にボタンのようなでっぱりがあり、それを押すとネズミがどんぐりに向かってお辞儀する。お辞儀の仕方と、ネズミやどんぐりの形がぴったり合った、センス抜群のデザインだったらしい。そしてTくんは、彼女にこう訊いた。
「なぜ、このネズミはお辞儀するんでしょうか?」(よろしければみなさんも、わかる範囲で考えてください)
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こういった話しの大好きな彼女、質問が終わるかどうかのタイミングから腕まくりして、そばにあった大きな切り株の椅子に座り、なぜネズミがどんぐりにお願いとお礼をしなければいけなくなったのか、そこにいたるエピソードをつくって話した。
その答えを聞き終わったTくんは、「そうかー、Kさん (彼女の名前) はそっちだったかー」と、そばにいた2人と一緒に、残念なような嬉しいような顔をしたそうだ。
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Tくんによると、お辞儀するネズミのおもちゃを見せて「なぜ、ネズミがお辞儀するのか」と質問したときの答えは、大きく2つに分かれたそうだ。
ひとつは、彼女のように、なぜネズミがどんぐりにお辞儀することになったのか、そしてこれから何が起こるのか、ものがたりを始める人。そばにいたMさんも、そうだったらしい。こちらが「ものがたり系」。
もうひとつは、ボタンを押すとネズミがお辞儀するおもちゃのメカニズムについて、自分の推理を説明する人。TくんとPoさんが、そうだったらしい。こちらが「メカニズム系」
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このグループ分けが興味深いのは、同じ「なぜ?」という問いに答えるために働かせる想像力の種類が、大きくちがうということ。
このちがいは、おもしろいおもちゃに出会ったときだけでなく、現実に生きている人や動物たちのエピソードを目にしたとき、それをどう理解して、どう自分のものにするかに関係するんじゃないかと、ぼくたちは考えている。
それは、日々の生きる活動の中で、いろいろな問題に直面したときに、ぼくたちひとりひとりがどんな対策をとるのかにも関係するのではないだろうか。
そして、得意とする「なぜ」へのアプローチの種類を知ることは、自分自身の創造性みたいなものを育てる作業にも、役立つかもしれない。
いわゆる職業や学歴と、このグループ分けが無関係らしいところも、気に入っている理由のひとつ。
ものがたり系の答えをつくった彼女は、生物学を学んだ自然保護区のレンジャーだったし、メカニズム系の答えを出したPoさんは、たしか、いわゆる文系学部出身で学校の先生。自然科学や工学を本格的に学んだことはないそうだ。
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残念なのは、その話しを聞いてしまったので、ぼく自身がお辞儀するネズミをみてなんと答えるか、試すことができなかったこと。
でも、思いも寄らない場面で、どちらかの答えを何気なくつくった自分を想像するのは楽しいし、気になるエピソードを記録するときに、何を書きとめ何を書きとめないでおくか、2つのアプローチを意識しながら決めることは、自分を眺めなおす機会になっている。
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さて、あなたの答えは、ものがたり系? それともメカニズム系?
え、そのどちらでもない**系??