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ecology of biodiversity conservation

notes

on ornithology, ecology, conservation of biodiversity, natural history, evolution, outliner as a personal dynamic media, and writing


Jargon. March 27 2015

ぼくの限られた経験では、英語圏の科学者も、たまに jargon という言葉を使う。「これは jargon なんだけど..」と謙遜しながら、自分の提案した言葉が広まり始めているときに、そんな言い方をする。少しだけ、誇らしげに。

これまたぼくの限られた経験では、これは、日本にくらす人たちが使うカタカナの「ジャーゴン」と使われ方が少しちがう。日本では、科学者も含め、やはり悪い意味で使うことが多いと思う。内輪でしか通じない訳の分からないもの、と言った意味で。

科学者は、自分の研究対象をとおして見つけた新しいものや現象の見方が、大げさに言うと新しい世界観が、名前をつけていいくらいに重要なもの (普遍的な問題) と判断したとき、それに命名する。

そのとき科学者は、自分の発見したものや現象や考え方が、自分の専門分野にとどまらず多くの人々に広がるよう、人々の生活に (広い意味で) 役立つよう、ほのかな願いを込めている人が多いと、ぼくは思う。これは、科学に携わるものにとっての、幸せな瞬間のひとつ。

そしてその言葉は最初、人々から jargon としてあつかわれる。社会常識から考えると突拍子もないことと驚かれたり、なんでそんなことにこだわるんだと笑われたりする。

でもやがてそれが、人々にとって無視できない jargon になるときがあり、「一部の識者 (この呼び方も好きじゃないけど) のあいだで注目を浴びている言葉..」などと言われるようになったり、流行語と呼ばれる (これはちょっと悲劇かも知れない) ようになったりしたあと、それらのハードルを越えるほどに重要な役割をもつと認められ、社会常識になることもある。

古くて有名なところでは、gravity (重力) や evolution (進化)、relativity (相対性理論) や DNA なんかが jargon だったこともあっただろうし、ぼくが携わっている分野だと ecosystem (生態系) や global warming (地球温暖化)、biodiversity (生物多様性) なんかも jargon だったことがあるだろう (え? 今もそう??)。

ひとつの jargon が世界中の人々の世界観を変え、幸せな人を増やすこともあるかも知れない。その存在をはっきりさせることで、みんなが新しい行動を始め、社会が変わるかも知れない。Jargon の誕生には、そんな希望も含まれていると思っている。

そしてそれは、あなたも知っての通り、科学者に限った話ではない。

だからあなたが、なんだか聞いたことのない言葉に出会い、そりゃジャーゴンだと、頭から理解不能と決めつけようとしていたら、

あるいは、自分の見つけたものやアイディアがどうせ狭い範囲でしか通用しないものだからと、安易に新しい言葉を生み出そうとしていたら、

あるいはただ見せびらかすために、jargon 的な言葉を使おうとしていたら、

自分の発見した世界観に、こうした願いこめて名前をつけた人たちがいることも思い浮かべてほしい (自分への戒めもこめて)。



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