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Imitation game (機械は考えることができるか). March 12 2015

Can machines think?

趣味 (アウトライナー関係) でだけど、このところソフトウェアが何かをよく考えていて、そのためにアルゴリズムについて頭を整理し始めたら Alan Turing のことを思い出した (近々日本で上映される映画の予告編の影響もあったかも.. 笑)。たしか、コンピュータの誕生に直接関わった人。コンピュータの基本的なアイディア、たとえばアルゴリズムなどを考え出した一人。そこで、彼の書いたものをオンラインで探し始めたら、1950 年のエッセイ “Computing machinery and intelligence (計算する機械と知性)” (1) を見つけ、最初のページを読んで衝撃を受けた。その内容はこんな感じ。

ここで私は「機械が考えることができるか」という問いを提案したい。その問いを解き明かすためには、まず「機械」と「考える」という言葉の厳密な定義から始めるべきである。その手段として、みんなが日常使っている「機械」や「考える」の意味を統計的に探るというやり方がある。でも、それは曖昧かつ危険なやり方だ。 そこで、代わりになる方法を提案したい。それは Imitation game というアプローチだ。

変化しつづける言葉を定義する

最初のページでこれほど感動したのは、久しぶり。多くの場合、言葉の定義を整理しようとすると、その言葉を使い始めた人の文章にあたる。でも、それだけでは十分ではない。言葉はダイナミックなもので、最初の定義のまま使われ続けることはありえない。とくに「考える」や「機械」といった自然発生的な言葉や歴史の長い言葉は、起源を知ること自体不可能かも知れないし、それが定義の理解に繋がらない場合も多いだろう。言葉は、人々がコミュニケーションのために使うことで存在し、変わり続けている。 だから、統計的な調査なんだと思う。

しかし (偏見かも知れないが) この統計的な方法だけだと「機械は考えることができるか」というセンテンスが提起する問題の本質に迫れない、と直感的に感じる。あなたはどうだろうか。Turing は、本質に迫るアプローチとして情報交換をとおしたゲームを提案した。Imitation game という名前は聞いたことあったし、その形式的な説明を読んだこともあった (だから調べ始めたのだけれど)。

Imitation game

このゲームの目的は、ひとりの質問者が別室にいる男女2人、 A と B の性別を判定すること。質問者が性別を当てれば質問者の勝ち、外れると負け。 質問者はテキスト情報以外伝わらない装置をとおして、何を質問してもいい。そして Turing は、ゲームを少し修正する。A を機械に置き換え、その目的を質問者が A は機械であることを言い当てることができるかどうかにする。このゲームに勝利することは「機械が考えることができるか」という問いに答えるのと同じ意味になる。

ここがポイント。このアイディアに対する今のぼくの理解は、以下のとおり。

言葉は記号である。 ある対象がその記号 (ここでは機械) の意味と対応しているかをテキスト情報で判断できるなら、その判断基準に使った言葉やセンテンスが定義に他ならない。「機械が考えることができるのか」という問いに答える手段としてテキスト情報交換のゲームを使うなんて、なんということだ。 そして、このアイディアがコンピュータ誕生に一役かったなんて、なんということだ。

おわりに

たぶん Alan Turing の「考える」の本質も、ここに示されている。そして、それから 70 年近い時間の中で、このアイディアはどう変化してきたのか。コンピュータ科学や心理学、生物学や哲学は「考える」について何を明らかにしてきたのか。楽しみが増えた感じ。大げさに言うと、ああ人生ってすばらしい。

ただし、まだ読み始めたばかりだから、まるっきし勘違いしている可能性もあるし、少し忙しいのでじっくり読む時間がとりづらくて、 あさってか1週間後頃にえらいがっかりしている可能性もあるけれど、 それもまあ人生の醍醐味.. かな。

  1. Turing A. 1950. Computing machinery and intelligence. Mind 59, 433–60.


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