gofujita notes

on outline processing, writing, and human activities for nature


農村の風景をつくった大きな力

東北と関東の農業史の情報を集めている。

たとえばここ数年の四月下旬の北上川流域の丘陵地。

川には雪どけの冷たくて透明な水が滔々と流れ、緩やかに波打つように広がる棚田の地中からはカエルの声が響く。

ヒバリは空高く歌い、まだ明るい雑木林の林床では、カタクリが優しい紫色の花を咲かせる。

そう。農村の田園風景は美しく、生きものにあふれている。

しかし、その風景は、たとえば奥州藤原氏などの地域の権力者や、昭和の戦中戦後の日本政府が、大きなスケールにわたって強引につくりあげようとした風景であり、その思惑と計り知れない自然の力との「戦い」の結果でもある。

水不足や洪水などの大きな自然現象を乗り越えるためには、広いスケールにわたる強い力が必要だったのだ。

農村の風景は、今、また大きく変わろうとしている。

その美しい風景にくらす生きものや人々の将来を考えるとき、個人や集落といった小さなスケールを遥かに超えた力も働いた過去を、無かったことにしてはいけない。